本研究は、弥生時代再葬墓研究が今後進展するために必須の次の3点をクリアすることを目的とする。(1)従来の発掘調査データの不備を改めるために[再葬墓遺跡調査法の標準化]を行う。(2)誰もが再葬墓遺跡に関する詳細なデータが利用できるよう[再葬墓遺跡の基本データの共有]をはかる。(3)弥生時代再葬墓の起源となる [縄文時代の再葬関連埋葬事例の類型化]を行う。そして以上の成果をデータベース化して公開する。 そのため、今年度は、(1)茨城県筑西市北原遺跡の発掘調査、(2)縄文・弥生両時代再葬墓遺跡一覧および関係文献一覧の作成・入力作業、(3)再葬墓遺跡の調査報告書および出土遺物の点検作業、の3点を実施した。(1)は作物との関係等から3月に実施した。しかし、調査区全面に古墳時代竪穴住居跡群が重複し、中世の区画溝も検出され、目的とする弥生時代再葬墓は検出できなかった。しかし、同遺跡の埋没環境・各時代遺構重複状況が把握できたので、次年度調査の条件整備に資するものである。この調査には学生の協力を得て実施した。(2)は学生の協力を得て約100遺跡、文献約250件の情報を収集・入力した。(3)は近年もっとも優れた再葬墓遺跡調査報告書である千葉県多古町塙台遺跡の出土資料の点検と、調査報告書記載事項および記載法を検討した。しかし、同遺跡の報告書も、出土遺物の記載はきわめて優れているが、調査法の点では遺構の重複関係の検討や記載に不備があり、調査法のみならず記載法についても標準化を要すると判明した。同様の検討を順次進めている。 本研究は1年ですぐ成果が現れるものではなく、次年度継続して検討を進める。
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