本研究では、弥生時代再葬墓研究が今後進展する条件として、(1)従来の発掘調査データの不備を改めるための[再葬墓遺跡調査法の標準化]、(2)誰もが再葬墓遺跡に関するデータが利用できる[再葬墓遺跡の基本データの共有]、(3)弥生時代再葬墓の起源となる[縄文時代の再葬関連埋葬事例の類型化]、を行い、以上の成果をデータベース化して公開する。 そのため、今年度は、課題(1)に関して、茨城県筑西市北原遺跡の発掘調査を行い、調査方法の改良を試行し、支出の大部分はこの調査に費やされた。この遺跡は、再葬墓での棺として用いられた土器の多くは既に掘り上げられているが、今次調査で最終漏れ土器片を検出したことによって、本来の埋設位置が復元できることを確認した。また、埋設土器のない土坑を検出することに努め、再葬墓に特徴的な、破砕管玉を伴う土坑を検出した。従来の調査例はほとんど土器棺の検出に主眼が置かれており、これによって再葬墓遺跡の実態を大きく描き直す必要が生じた。この点は、今次調査のもっとも大きな成果である。 また、課題(2)については、再葬墓遺跡データおよび再葬墓関係文献データとして143遺跡・文献550件を収集し、内容の確認作業を進めた。この作業の過程で、再葬墓の認定条件の設定が困難であることがあらためて痛感され、次年度の大きな課題となった。また、顔面付土器に関する遺跡・資料情報を加えるべきことにも気づかされた。しかし、課題(3)については検討を進めているが、不十分であり、次年度の課題として残った。
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