研究課題
平成21年度にベトナム中部・カインホア省カムラン市ホアジェム遺跡で実施した発掘調査を受けて、平成22年8月、カインホア省博物館において出土遺物の整理を実施した。山形眞理子、松村博文、研究協力者の田中和彦(上智大学)、ブイ・チー・ホアン(ベトナム南部持続可能発展院)、グエン・キム・ズン(ベトナム考古学院)が参加した。出土した9基の甕棺墓のうち4基の甕と蓋、さらには副葬土器26点について器形復元と実測を行うことができた。発掘と整理の成果について、現地で開催された国際シンポジウム『カインボアの先史・原史考古学』にて山形とベトナム人研究協力者が発表し、田中はフィリピンとベトナムを含む環南シナ海地域の鉄器時代土器について発表した。甕棺内出土人骨のAMS年代が後2~3世紀、伸展葬人骨が前1~2世紀、貝層が前800年頃という測定結果から、この遺跡の利用が複数回におよんだことがわかる。甕棺墓の年代は予想通りで、所謂初期国家の出現期と重なる。鐘ヶ江賢二はホアジェム出土土器30点について蛍光X線分析を行った。その結果、原料粘土に幾つかのグループがあることが判明した。そのグルーピングが土器自体の型式や用途と有意に結びつくかどうか、検討中である。いずれのグループも在地産粘土を利用した可能性が高い。松村は甕棺墓と伸展葬の人骨9体の頭骨と歯の形態学的データを採取し、2007年以前に出土した人骨データとも合わせ生物統計学的分析を行った。ホアジェムの人々は東南アジア先住集団の系譜に属さず、中国からの影響が大きいとみられる他の東南アジアや中国南部の集団に近いことが明らかになった。ただし北のドンソン文化とは異なり、島嶼部の東南アジア人に近い。以上の結果は、南シナ海を超えて移動した鉄器時代集団の実態に迫る重要なデータをもたらした。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) 図書 (3件)
鹿児島国際大学考古学ミュージアム調査研究報告
巻: 第8集 ページ: 9-20
2010 50 Years of Archeology in Southeast Asia : Essays in Honour of Ian Glover River Books, Bangkok(Berenice Bellina, Elisabeth A.Bacus, Thomas Oliver Pryce and Jan Wisseman Christie (eds))
ページ: 194-205
Anthropological Science
巻: 2011.119 ページ: 67-79