本年度は、平成20・21年度に引き続き、各機関所蔵の西都原古墳群出土埴輪の調査研究を継続した。 なかでも、本研究課題の中心をなす宮崎県立西都原考古博物館所蔵の西都原171号墳出土埴輪の調査研究は順調に進捗し、円筒・形象埴輪の大部分について実測・撮影・採拓が終了した。また、宮内庁書陵部所蔵の女狭穂塚古墳出土埴輪についても、20・21年度に引き続き調査研究を継続した。円筒・形象埴輪とも実測・撮影・採拓がほぼ終了した。この他、京都大学総合博物館所蔵の西都原169号墳・171号墳出土埴輪についても調査研究を継続し、円筒・形象埴輪とも、全ての資料について実測・撮影・採拓が終了した。また、宮崎県立西都原考古博物館所蔵の西都原古墳群出土埴輪についても調査研究を行い、円筒・形象埴輪とも、全ての資料について実測・撮影・採拓が終了した。 上記のように、現時点で知られている西都原古墳群出土埴輪について、一部をのぞいて、ほぼ全ての資料の実測・撮影・採拓・計測が終了したことになる。この作業を通じて、各機関所蔵の「大正調査」出土埴輪と、大阪大谷大学・宮崎県教育委員会が実施した「平成調査」出土埴輪との間に、破片どうしの接合関係が多岐にわたって確認され、一部未確定であった出土古墳についてもほぼ確定することとなった。 これらの調査研究の結果、西都原古墳群における古墳時代中期中葉の埴輪生産が「女狭穂塚系列」と「男狭穂塚系列」に二大別されることが明らかになるとともに(「マクロな分析」)、両系列を構成する工人集団の内部構造の細部についても明らかとなった(「ミクロな分析」)。平成22年度中に、上記の西都原古墳群出土埴輪の全てについて、実測図・写真・拓本を掲載した研究成果報告書の刊行をめざしたが、実測調査に伴う膨大な作業量のため、年度内には刊行に至らなかった。同報告書については、平成23年度中に刊行の予定である。
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