本年度の現地カマン・カレホユックでの資料調査は、共同研究者のロンドン大学のM・ウィードンが行った(2008年9月)。これによりカマン・カレホユック北区'円形遺構1'出土の象形文字付印影資料の暫定的なカタログの作成はほぼ完了した。またM・ウィードンは、カマンの西、クルシェヒールの近郊に位置するマルカヤの象形文字碑文の調査成果をまとめ、Anatolian Archaeological Studies Vol.17(2009年7月刊行予定)にJ・D・ホーキンスとの共同執筆の論文として癸表する。マルカヤ碑文は、中央アナトリアに残るヒッタイト象形文字碑文の一つとしてすでに1940年代には知られていたが、今回はその再調査であり、地理的に近いカマン・カレホユック出土の象形文字資料との比較資料としても注目されている。 一方吉田はこれ迄の資料整理、研究と国内での作業を進め、特にヒッタイト象形文字の字形の変化に着目した成果の一部をトルコ調査研究会で口頭発表した。象形文字の字形の時代的な変化については、資料上の制約もあり、同時期の楔形文字に比べて研究が遅れているが、今後の研究の進展により象形文字碑文の年代付けの有力な指標になるものと期待される。 また、カマン・カレホユック出土の象形文字資料(印章資料)の出版にむけて、全体の構成等具体的な検討に入った。
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