カマン・カレホユック出土の印章資料の現地での調査は、昨年度に引き続き、共同研究者のロンドン大学のM・ウィードンが実施した(2009年9月)。カマン・カレホユック北区の'円形遺構1'から大量に出土した印影付粘土塊(封印として用いられた)に加えて、これ迄に他の発掘区から出土したヒッタイト時代(前17~12世紀)に年代付けられる全ての印章資料を調査対象とした。本研究の主眼である印面のヒッタイト象形文字、また装飾、形状、材質、色調、出土状況(出土地点、層位など)についても詳しく注記した。新たな出土物については、必要に応じて保存処理を施した上で写真撮影、注記を行った。 一方吉田は国内で、これ迄に蓄積されたデータの整備、中央アナトリアの他遺跡出土の資料との比較研究にあたった。 カマン・カレホユック出土の印章資料は、時代的偏りはあるもののヒッタイト王国の初期から末期までの全時期をカバーしており、同一遺跡でヒッタイトの印章、印面の象形文字の変遷を跡づけることの出来る数少ない遺跡である。本研究を通して、これまで知られていなかったヒッタイト象形文字の音価の同定、字形の時代的変化、また印章の使用法などについても新たな知見が得られつつある。
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