研究課題
カマン・カレホユック遺跡(トルコ共和国のほぼ中央部)出土資料を主に対象とする現地調査は、本年度も海外共同研究者のロンドン/オクスフォード大学のM・ウィードンを中心に行われた(2010年8月)。最終年度の本年は、カマン・カレホユック出土のヒッタイト時代の印章資料の総括的な研究の出版を視野に入れて、これ迄調査した資料、データの整理、整備に重点を置いた。同時にアナトリア各地の遺跡出土の資料との比較研究を進め、まとまったヒッタイト印章資料の出土地としては最も西に位置するカマン・カレホユックの資料が全体の中でどのように位置づけられるのか、西アナトリアの文化の影響の有無、あるいはヒッタイト象形文字の起源など、より全般的・基本的な問題にも焦点が当てられた。また、カマン・カレホユック遺跡の西へ30kmほどに位置するビュクリュカレの昨年の発掘調査で出土したヒッタイトの粘土板文書(書簡)の調査が行われた。このヒッタイト語で書かれた書簡(発信者は恐らくヒッタイト王か王子)は楔形文字の字形の特徴から前14世紀に年代付けられるが、これはカマン・カレホユック遺跡北発掘区の「円形遺構1」から大量に出土したブッラ(印影付粘土塊、その印面に象形文字が記されている)とほぼ同時期にあたり、本研究にとっても極めて重要な意味を持つものと言える。今後の発掘調査の進展が注目される。
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I.Singer (ed.), ipamati kistamati pari tumatimis.Luwian and Hittite Studies Presented to J.DavidHawkins on the Occasion of his 70th Birthday
ページ: 249-255