研究課題/領域番号 |
20520671
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
難波 洋三 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 部長 (70189223)
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キーワード | 弥生時代 / 銅鐸 / 銅戈 / 成分分析 / 青銅器流通 / 柳沢遺跡 |
研究概要 |
平成23年度は、4月に滋賀県立安土城考古博物館で「大岩山銅鐸から見えてくるもの」展が、7月に大阪府立弥生文化博物館で「豊穣をもたらす響き 銅鐸」展が、難波のこれまでの銅鐸研究の成果を基礎として開催された。この2つの展覧会の図録には、銅鐸群の変遷についての難波の研究を総括する論文を発表し、また、展覧会の構成や図録の編集にも全面的に協力することで、本研究をはじめとする難波の一連の青銅器研究の社会的還元を果たした。展示品の銅鐸は、会期中の休館日に博物館研究員と共同で詳細な調査を実施し、多くの新知見を得るとともに写真撮影・ビデオ撮影・計測などの方法で資料化した。 また、発見以来、分析と研究に難波が中心的な役割を果たしてきた長野県中野市柳沢遺跡出土青銅器に関しては、年度末刊行の報告書に掲載する論文を執筆するとともに、発掘担当者による事実記載の作成と校正にも全面的に協力した。報告書掲載論文では、柳沢遺跡出土の銅鐸と銅犬の位置づけを明確にし、本格的な水稲耕作の中部高地での開始と連動して、栗林式土器成立前後の時期に青銅製祭器を使う西日本的な祭式もこの地に導入されたことなどを明らかにした。また、柳沢遺跡出土青銅器について実施した精度の高い成分分析によって、議論のあった大阪湾型銅戈a類と銅鐸の併行関係が明確になり、また、ヒ素やアンチモンといった少量金属の濃度の変化に着目することで、金属原料の流通の変革が銅鐸でいえば外縁付鈕1式と2式の間にあり、鉛だけではなく銅も、この時に朝鮮産から中国産へと移行したことなども示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
難波のこれまでの銅鐸研究を総括する特別展が滋賀と大阪で開催され、研究成果を社会的に還元できた。また、これらの特別展中に多くの銅弾の調査を実施し新知見を得るとともに、資料化を進めた。さらに、その発見が非常に注目を浴び、これまでの中部高地や東国の弥生時代中期のイメージを大きく書き換えることになった柳沢遺跡の報告書刊行に協力し、出土青銅器についての論考を完成し発表した。
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今後の研究の推進方策 |
前回の科学研究費助成金の報告書「難波分類にもとづく銅鐸出土地名表」を研究者から求められることが多い。この銅鐸出土地名表を再チェックして改訂し、出土地不明銅鐸のリストを加えて完成版の作成を目指したい。また、漢鏡の成分分析例も増やしたい。
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