平城宮第二次大極殿院・内裏東外郭出土冶金関連遺構・遺物について再検討を行った。今年度は主として平城宮第33・70次調査出土の冶金関連遺構・遺物を対象として分析を進め、いかなる業種の冶金関連工房が存在したかを追究した。これらを分析した結果、推定宮内省北東部を中心として、第二次大極殿院東外郭北半部に、鉄鍛錬鍛冶・鋳銅・金加工業種が存在することが判明した。 これらの冶金関連遺物には板状鋳鉄(?)片等の鉄関連遺物、熔結銅等の銅関連遺物、炉壁類、取瓶等の土製品、その他の遺物がある。また、冶金関連遺構の分析結果から、推定宮内省北東部の一画に設置された掘立柱建物の工房では、まず鋳銅業が実施され、その後、鉄鍛錬鍛冶が行われたことが明らかとなった。なお、平成21年度の研究で確認された鉛銅合金加工については、今回は確認できなかった。 今回新たに金加工用取瓶の存在を確認し、平城宮内の工房においても金の熔解加工が行われていたことが実証できた。従来の研究ではその具体的な用具について全く不明であったが、本研究により、8世紀後半に平城宮内で使用されていた取瓶の実態が明らかとなった。これにより、7世紀後半の初期官営工房である飛鳥池工房で使用された金熔解坩堝との比較検討が可能となり、官営工房における金加工技術の変遷過程を明らかにする上で非常に大きな手がかりが得られた。これは、律令期における鉛も含む非鉄金属調整加工技術の実態解明に寄与する大きな成果といえる。
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