21年度は牛肉生産における品質構築と安全性保証のための取り組みとして、1.「とちぎ和牛」の肥育素牛および枝肉の市場評価、2.岩手県の「前沢牛」産地における品質維持と経営継承とのかかわり、3.北海道十勝産の乳用種・交雑種牛肉の産直取引における品質・安全性の確保、の3つについて実地調査と分析を進め、以下のような成果が得られた。 1.栃木県矢板家畜市場に上場される子牛は4割弱が「とちぎ和牛」の肥育に向けられる。中でも県北部の那須野農協管内が肥育素牛の一大産地であり、県内外の多数の購買者の人気を集め、取引価格が高くなる傾向にある。また東京食肉市場の「とちぎ和牛」の枝肉共励会では、枝肉重量の大きさが評価される一方で、胴の厚さ・肩幅など、需要の多い部位の産地内部での均一化をはかることが生産者に要求された。 2.高級銘柄牛肉「前沢牛」の産地・岩手県奥州市前沢区では、上物率(4等級・5等級)80%以上が最大の経営目標である。肉質を左右する素牛選畜と飼料給与に関する意思決定は、高齢の経営主に代わって次第に後継者に任されるようになっている。農協の肉牛部会のほかに、年齢別、飼料購入、運搬業務等の各種の生産者グループが組織され、情報交換が活発であり、20~30歳代の生産者も少なくないことが、後継者の就農を促す要因と考えられる。 3.北海道十勝地方では、生乳生産調整や飼料高騰などの経営環境の変化に対し、飼料内容や肥育期間の見直しや、交雑種から乳用種へのシフトなど、肉牛農家が柔軟に対応している。大衆牛肉の品質構築に関しては、乳用種の超早期肥育や、100%素牛域内調達による乳用種・交雑種牛肉の地域内一貫生産がセールスポイントとなっている。いずれの銘柄もBSEの国内発生以前から生協との産直取引が行われており、飼料給与内容、抗生物質等の休薬期間について厳しい取り決めがなされ、生産者・流通業者間の会合と視察が定期的に実施されている。
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