本年度は、本研究の最終年度であるために、これまでの各地域での都市空間構造の研究を総括し、課題についてのまとめを得るために以下の活動を実施した。 (1)補足調査(平成24年2月~3月) これまで調査を行った地域の資料で不足しているものについては、一部現地調査を含めて補足調査を、沖縄と台湾で行った。沖縄と台湾は、東アジアでは辺境に位置するが、辺境であるがゆえに中心部に存在したものが原形をとどめたり、純粋な形で発達したりするものである。また他の辺境地域との比較を行うことによって、東アジア全体の伝播のパターンを知ることができると考えたためである。 その結果、特に沖縄では琉球時代の城郭都市であるグスクを実見し、日本の城郭都市とは異なる構造を持つことがわかった。近世を通じて東アジアで国際交流の結節点であった琉球で、独自の都市構造が発達していることは非常に興味深い。 また台湾における近代都市の形成は、もともと存在した中国的な都市構造に、日本の植民地としての都市計画が基盤となり、第二次大戦後の建設によって、新しい都市計画が施行されたが、随処で両者が混在した景観が生まれた。その痕跡は現在でも残っており、それが大陸中国との違いを生む原因ともなっている。同じ日本の植民地であっても満洲や朝鮮の都市とも異なる構造を持っており、東アジアの生活空間の多様な発達史の解明にヒントとなることがわかった。 (2)総合的まとめのための意見交換 台湾訪問時に、現地の研究者との意見交換を行い、参考になる知見を得た。
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