研究概要 |
本年度は,まず次の2点に関して,資料収集と分析を進めた。 1.20世紀前半に朝鮮半島を訪れた日本人による旅行記や報告書類は,少なくとも100点程度が確認される。国立国会図書館や学習院大学東洋文化研究所を中心に,それらの閲覧を進め,当該期の代表的な旅行コースや観光地の分析を進めた。その結果,鉄道の整備に後押しされて,史蹟としては慶州と平壌の2か所が特に訪問地として好まれたことが裏付けられた。扶余を含む他の史蹟地は,この2か所に比較すればマイナーな場所であったが,日程のゆとりのある訪問者や,歴史に意識的な訪問者にとっては,重要性は高かった。 2.扶余は「内鮮一体」の象徴として位置づけられた史蹟であり,その意味で植民地主義と史蹟の関わりを端的に示している。そこで,扶余に関わる旅行記,ガイド,地図,絵葉書類のほか,いわゆる扶余神都計画に関する資料を,改めて重点的に収集した。 以上の成果の一部は,国際歴史地理学会(8月)において発表した。その内容は,同プロシーディングにおいて公表される予定である。
|