平成20年度に実施した、千里ニュータウンでの調査結果の分析を進め、11月の人文地理学会大会(名古屋大学)で口頭発表した。その資料に使った書籍2冊の書評を「地理科学」64-3に掲載した。また、中国上海における予備調査で得た資料を活用して住宅研究を進める過程で、中華人民共和国発足直前の上海都心部における銀行・保険業店舗の空間的展開を知り得たため、この成果を副産物として、10月の東北地理学会(弘前大学)で口頭発表した。この研究に使った資料については、「人文地理」61-4の文献解題で公表した。バンクーバーについては、6月に1週間の現地調査を実施し、成果の一部を10月の日本地理学会秋季大会(琉球大学)で口頭発表した。また、同じくバンクーバーの研究成果の一部を、雑誌「地理」54-11における特集「バンクーバー冬季オリンピックの舞台」の表紙、巻頭カラーグラビア、巻頭論文として掲載した。さらに、2010年冬季オリンピックに合わせてバンクーバーが持つ住環境を一般に広く公表するため、研究成果の一部を『バンクーバーはなぜ世界一住みやすい都市なのか』(ナカニシヤ出版)にまとめた。住宅地について別角度から分析と考察を施した成果も得られており、それについては『都市の景観地理』のシリーズの中の一冊において掲載が確定している(22年度秋に刊行予定)。他方、政情不安で調査の実施が実質的に不可能となったタイ・バンコクは、現地調査の中止を決断した。その代替として22年2月、斜面住宅地の持続的発展方策の実施例として捉えるべく、長崎市を訪問して、資料収集と予備調査を実施した。また、バンクーバーについても調査の一層の精緻化を図るため、3月に5日間の現地補足調査を実施した。その成果については、千里ニュータウンにおける親子近接別居についての研究とともに、査読付雑誌に投稿すべく執筆中である。
|