平成22年度は、平成20・21年度に現地調査を実施したカナダのバンクーバー、および日本の千里ニュータウンにおける成果の分析と磨き込みに加え、中国の上海において旧市街地の再開発にともなう住宅地の変化を主なターゲットに定め、年度当初より上海調査に向けた準備を進めた。上海調査は8月の現地調査に先駆けて、インタビュー調査の設計、謝金を活用してのインタビュー項目の翻訳を実施し、現地調査では研究代表者の所属大学と長年の交流実績がある上海師範大学の助力を得て、2人の専任教員アドバイザー、4人×2日の調査要員学生を手配し、上海市芦湾区田子坊において「自然発生的な商業化にともなう旧来の住宅地の変化とその意味」を調査した。帰国後もこの調査の分析は現在まで継続し、その一部については後述するように既に公表した。 研究成果としては、夏季までに当補助金で整備を継続している「全国マンション市場動向」(国内の分譲マンション統計)を活用して分担執筆著書『図説大都市圏』に短い論考を掲載した。また、海外対象地域のひとつであるバンクーバーに関しては、夏までに分担執筆著書『都市の景観地理イギリス・北アメリカ・オーストラリア編』に論文1本を、さらに21年度(22年2月)に刊行した著書『バンクーバーはなぜ世界一住みやすい都市なのか』の初版第1刷(1500部)が売り切れたため、ごく一部の字句修正で改善を図った初版第二刷(500部)を8月月に刊行した。上海に関する成果は、23年3月末に開催された国際シンポジウムで成果発表(論文発表での参加)、および日本地理学会春季大会(震災のため中止、発表は成立)で公表した。
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