研究概要 |
最終年度に当たる平成22年度には、過疎地域統計データおよび市町村合併に関する統計データから成るデータベースの構築作業を行った。これらのデータベースをもとに分析を行った結果、過去、東日本と西日本の間で過疎の類型が明らかに異なっていた状況から、現代に至るにしたがってこの二地域間の差が顕著ではなくなってきたことや、四国地方の過疎地域の依然深刻な状況が判明した。 平成の市町村合併では、対等的な合併のほかに、小規模山村地域が比較的規模の大きな地方都市に吸収される形式で合併される事例も見受けられ、合併後の小規模山村地域の状況や、小地域統計の取扱いに危惧が残されることが判明した。すなわち、合併によって公共サービス機会の衰退や、アクセシビリティの劣悪化、交通・移動コストの上昇等が生じ、山村等の縁辺地域の住民がさらに縁辺化されてしまった可能性が高い状況を生んだことが分かった。 8月にスウェーデンのイエンシェピングで開催された国際地域科学会ヨーロッパ部会50周年記念大会に参加し、ソーシャル・キャピタルに関する部会において、分析スケールの変化に応じて地域現象を捉えるべきであるという主張の下での研究報告を行った。 最終的に今後の課題を整理すると、しばらくは急速に高齢化が進む日本の中で、過疎地域、とくに山間地域の社会経済的状況の追跡や、平成の市町村合併のインパクトに関する、さらに詳細な検証が不可欠であることなどが挙げられる。,また、小地域統計の利用活性化に向けた取り組みも必要である。
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