研究概要 |
本研究の目的は、韓国の「新活力事業」の展開と実態を全国レベルで明らかにするとともに、日韓の過疎地域で起こっている住民組織の再編を政策スタイルの変化と関連づけながら解明し、日韓の過疎政策と住民組織が近年の新自由主義という新たな政策環境の下で、どのように変容し顕在化しているかを究明することである。 本年度の研究調査では、昨年度に引き続き、日韓両国の過疎地域における新自由主義政策環境下の住民組織の再編を明らかにするため、次のような研究調査を行った。まず韓国に関しては、研究対象地域である全羅北道鎮安郡におけるフィールドワークを引き続き行った。昨年度は「新活力事業」による住民組織の再編について世帯レベルでの聞き取り調査を行ったが,今年度は主に新たに生成された機能組織の役割に注目しながら、住民組織と行政との関係変化について調査を行った。その結果、新住民をも巻き込んだ機能組織や従来の集落(マウル)の空間スケールを超えた機能組織が活発に生成されており,行政との関係においても従来の「指導される」受け身的な立場から,政策の立案や補助事業の申請段階から提案を行う地域ガバナンスの一翼を担うまで変化していることが確認された。次いで日本に関しては、広島県安芸高田市を対象に、韓国での調査と同様の方法で、自治組織の再編に関する補足調査を行いった。その結果,旧高宮町の地域コミュニティ支援事業が新市においてもモデル事業として採択され,新市全城において推し進められたが,住民が認識する地域コミュニティの空間スケールとの乖離から,既に形骸化したケースすら認められた。なお、これらの成果を前年度までの成果とあわせて,国際地理学連合の持続的農村システム委員会にて公表する準備をしている。
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