本年度は先ず、昨年度実施した川根地区の住民自治について追加調査を実施し、その成果を2009年度日本都市学会で発表するとともに、論文(査読有り)として成果をまとめた(2010年4月刊行)。次に、川根地区の住民自治のまちづくりが旧高宮町に展開されていく過程を明らかにするため、関係資料の入手、関係機関や関係者への聞き取り調査を実施した。結果は以下の通りである(研究成果は愛媛大学法文学部論集に掲載)。 高宮町では児玉町政発足後すぐに全8地区に振興会組織が結成されたが、住民自治のまちづくりは、この組織結成だけで可能となったのではなく、住民と行政の信頼関係の構築、まちづくりに対する住民と行政のそれぞれの意識改革、などを達成するための用意周到な総合的な諸施策の実践によることが明らかとなった。 住民と行政の信頼関係の構築には両者の対話の場である地域振興懇談会の開催が大きな役割を果たし、当初の相互の不信感から次第に信頼感が醸成されていった。住民の意識改革は多様な要因からもたらされたが、主要なものは、(1)地域振興懇談会、(2)全町公園化構想、(3)まちづくり活動支援制度、(4)職員の意識改革と振興会での活動、(5)まちづくり学習会、であることが明らかとなった。一方、行政職員の意識改革には、地域振興会を住民自治のまちづくりの中心に位置づける町長の基本的考え方、その具体的施策が大きな役割を果たしたことが明らかとなった。 なお、地域振興会に対する地域住民の意識に関するアンケートを実施したが、現在解析中で、その成果は2010年度に公表の予定である。
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