本年度は研究のまとめとして、旧高宮町の住民自治システムが合併後に新自治体(安芸高田市)へいかに導入されたかに着目し、行政の各種施策、住民側の主体的活動、住民と行政の協働のまちづくりの仕組み、等を考察し、「小さな自治」システムの展開に関する可能性と課題性の解明を試みた。その結果、以下の諸点が明らかとなった。 1)安芸高田市では、旧高宮町の協働のまちづくりを参考にしつつも、異なる自治体が合併することにも配慮した用意周到な多様な施策が展開され、全国的に注目されるまちづくりが展開された。 2)注目すべき施策を列挙すると、建設計画における基本理念「パートナーシップによるまちづくり」の確立、合併前における振興会の設立、行政の機構改革、条例・要項の整備、住民活動への財政支援、行政と住民の対話の場の設置、地域振興推進員の任命とまちづくり学習、双方向の情報共有、などである。 3)これらの施策により、最終的には、住民と行政の意識改革、両者の信頼関係の構築などが達成され、このことが協働のまちづくりの推進の大きな力となった。 4)個別の振興会への聞き取り調査では、振興会が地域を代表する「新しいコミュニティ」との認知と活動の活発さの程度を規定する2要因が明らかとなった。それらは、(1)組織構成と組織運営、(2)振興会の活動内容、である。(1)としては「新しいコミュニティの目的・意義の正確な理解」、「リーダーの存在」、「トロイカ方式による振興会の運営」などが、(2)としては「まちづくり活動の手順を踏む」、「従来からの活動の支援と振興会を代表する行事の立ち上げ」などがある。 5)振興会会長に対するアンケートからは、振興会は地域代表性をもつ共同体と認識されており、総合的に判断して振興会の設立は地域に好影響を与え、将来とも必要な組織と認識されていることが明らかとなった。
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