研究概要 |
平成20年度において、本研究はまずフリーエジェントと地域中間労働市場に関わる理論研究を実施した。フリーエジェントに関わる研究蓄積は未だ多くない。ここでは,経済学を核に現下の労働市場のダイナミズムのなかでのフリーエジェントの位置づけを行い、外部労働市場、内部労働市場に加え、第三のメソ・スケールにおける地域中間労働市場の位置づけ・役割に関して検討を行った。ここでの成果は、従来の国民経済的視点からの雇用就業政策の限界を明示し、加速する労働市場の流動化を受けて地域の多様な主体・資源をネットワーク化することによって、フリーエジェント化を地域の雇用就業の安心システムとして構築することが重要で、中長期的には都市の雇用就業戦略の策定、さらには「フル就業」といった新たな社会の労働市場の姿を模索する必要性があるとの成果を得た。 これまでフリーエージェントの実態把握はわが国では行われた事例はない。理論研究の成果をもとに,フリーエジェントの実態把握を試みた。本年は、就業構造基本調査、国勢調査など既往統計の集計を実施した。さらに、海外での実態との比較研究を行うため、労働市場の高い流動性とハイテク産業の成長を実現した北欧における実態を分析することに着手した。実際には、フィンランドのヘルシンキ大学・政府へのインタビューを実施したところである。ここでの成果は、地域ハイテク・クラスター内において高度な専門能力を有したフリーエジェントが存在していることである。次年度以降、こうしたハイテクビジネスに呼応したフリーエジェントのメカニズムについて調査を深める予定である。
|