研究概要 |
今年度は特に中古車輸出の状況と,なぜそのような流通が形成されたのか,再流通の状況はどうなのか,に重点をおいて研究した。これによって典型的な流通の状況についてはある程度明らかになったが,当初目的としていた輸出入双方の関連産業の立地状況をまとめるまでには至っていない(部分的な情報収集は行っている)。 一方既存の経済地理学の研究成果を再検討し,リサイクルネットワークの経済地理学とでもいうべき分野の研究成果の精査については鋭意進行中であるが,公刊された成果とはなっておらず,平成21年度研究前半においての重要課題となる。これにより本研究の学術的位置づけがより明確化される。 国内解体業者への聞き取りは九州・中国方面を中心に進め,その中で各社の中古部品輸出(自動車解体)がいつから始まったかなどの基礎情報を収集してきた。これらの調査を通じ,地理的なネットワークの形成の理由を理解するための歴史研究の重要性を強く認識した次第であり,解体業者の発展プロセスと輸出へのシフトといったことについて,全国規模で引き続きヒアリングを行う。中古車輸出については,業界団体を訪問し,同様の認識を強く持った。 海外調査はアラブ首長国連邦で実施した。中古車や部品の再輸出の状況,流通ネットワーク形成の要因などを一定程度整理することができた。また,ロシアと関係の深い中国黒龍江省を訪問し,現地の中古車・中古部品・資源循環の状況を確認した。日本発の中古車や部品が流入しているのではないかという本研究に係わる視点で行った調査であったが,むしろ国境エリア付近でのドメスティックな中古車流通や解体の状況について把握することができ,本研究にも参考となる成果を残した。(現在,平岩幸弘,他「中国黒龍江省の中古車流通と廃車処理に関する調査-ロシアとの関係に着目して-」として投稿中)
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