当研究は、中国東北三省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)の国際的玄関、遼寧省大連市における日系企業の事業活動に焦点を当てて、大連市の成長を牽引してきた日系の繊維、食品、機械(含・電機、精密等)、情報産業の地域的生産体制の差異を明らかにすることを目的としている。このため、次の3点を重視しながら研究を行った。1つは、「結節都市」大連という地理的優位性と交通結節機能の分析である。2つ目は、日系企業の企業内国際分業と国際物流システム、情報通信システムを連動させながら分析を行うことである。3つ目は、日系企業地域的生産体制を空間的に偏倚させる要因となる地域政策についても検証を行うことである。 1について、大連市は、日本からの投資のゲートシティとしての役割を担い発展を遂げてきた。2008年には都市建設の重要プロジェクトも135項目にわたって実施されモノレールや地下鉄の建設が進んでいる。その他、港湾施設の能力増強、高速鉄道の充実、空港整備など、地理的拠点性を強化する投資が続いている。2つ目は、これまで日本からはコストカットを目的とした進出が多かったが、現地市場の拡大を期待した進出も増えている。物流は港湾活用が主流だが、一部精密部品などは空輸が行われ、日本の倉庫や顧客までのリードタイムは約2週間となっている。3つ目は、大連市ソフトウエアパークのように産業の高度化(例えば環境、情報、金融などの「三高」政策)が進んでいる。日系企業のなかにも現地に進出している企業も出てきている。 このようにして、「結節都市」大連市は、社会基盤の整備と日本を含む外資誘致政策を挺子に、その拠点性の維持と産業構造の高度化を図っていくことが目的化され、それに伴い日系企業の地域的生産体制も次第に市場対応型、ソフト開発型企業にシフトしつつある。
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