本研究では、17~19世紀にロシア帝国が作製した主要なシベリア図およびアトラス類を取り上げ、その作製目的や作製意義およびロシア地図史における位置づけを明らかにすることを目的とした。当該年度は、本研究の最終年度にあたるため、これまで収集した史料やアトラス、文献などの整理を行い、研究成果をまとめる作業を行った。実施した研究成果は以下の通りである。 1.17世紀におけるロシアが描くシベリア地域像の特徴を論じるために、ロシアのシベリア支配という政治的コンテクストにおける地図作製の役割について、レーメゾフの作製した『シベリア地図帳』『公務の地図帳』『地製図帳』の3冊のアトラスを中心に分析を行った。 2.18世紀におけるロシアが描くシベリア地域像の特徴を論じるために、ベーリングによるカムチャツカ探検とシベリア図について、ロシア国立歴史博物館のシベリア図コレクションのなかのシベリア図から明らかにした。 3.19世紀におけるロシアが作製したロシア全士を対象とした「人種地図」の作製史を明らかにするために、その前段階の17世紀~18世紀にかけてのシベリアの「民族地図」の在り方をおさえる必要があった。これらの地図作製にかかわるロシアにおける研究史について整理した。 4.17~19世紀におけるロシア地図史研究のなかでのシベリア図研究について、先行研究を整理し、北東ユーラシアの地域像がロシアおよび日本でどのように描かれてきたのか、今後の展望を行った。
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