本年度はまず、前年度に行った河南省登封市域の都市部および農村部における調査結果の分析とその論文化を実行し、その成果を学術誌『奈良大地理』17巻に発表した。それによれば、都市部では、露天市場の建物内への収容(「退路進庁」)と、集市の廃止や常設店舗化が進む一方、生鮮食料品を扱う小型スーパーや精肉店の立地が進んでいることが明らかになった。他方、農村部では定期市の規模の顕著な縮小と業種構成の大きな変化が確認されるとともに、ここでも常設店舗の増加と、政府の援助を得たミニスーパーマーケットの出現が観察された。これらの現象は、統計数字で捉えられた近年における全国的動向、すなわち(1)集市数の減少、(1)集市売上高の停滞、(3)小売総売上高に対する集市売上高のシェアーの低下と軌を一にするものである。 次に、本年度の9月には、巨大都市西安市での現地調査を案施した。研究代表者は、現在学長職にあるため、調査期間は5泊6日(移動日を除くと実質4日)に限られるため、予定していた北京市での調査は断念し、西安市での調査に専念した。その結果によれば、ここでも建物内に収容された小売市場の設備の改善による常設店舗化と、大型スーパーの立地増に加えて食料品をメインとする小型スーパーマーケットの出現とが確認された。一方、卸売市場については、数カ所存在する青果物卸売市場間で、階層分化と機能分化の傾向が鮮明になりつつあることが確認された。すなわち最大規模の市場が、移転に伴い規模拡大・取引の広域化・野菜卸売への特化を進める一方、第2位以下の市場が、果物卸売に特化したり、小売機能の割合を高めたり、相対的に地位を低下させたりする状況が認められた。これらの成果については、1年以内に学術誌に発表する予定である。
|