研究概要 |
1986年のミクロネシア連邦の成立の前後から,政府成立による公的雇用機会の拡大や自由連合協定による米国移民が,ヤップ州離島出身者に州都コロニア,連邦首都ポンペイ島,またグアム島を始めとする米国での生活の道を開いた。20年を経で,ヤップ離島出身者は移民先のアソシエーションを通じ母社会と密接な関係を保ち,脱領域的な公共圏を生み出している。2008年度の研究では,ポンペイ島とグアム島在住者の情報を収集し,両島在住のヤップ離島出身者のアソシエーション活動への参与観察とメンバーの生活状況調査を実施した。 現在のポンペイ島とグアム島の離島出身者のアソシエーションは,ヤップ本島出身者のアソシエーションの一部として存在している。ポンペイ島の離島出身者の属するアソシエーションはYap Men and Women Organization(YMWO)であり,グアム島のオレアイ環礁出身者のアソシエーションであるWoleaiOrganizationofGuam(胃00G)はグアム島のヤップ州出身者のアソシエrションの下部組織である。ポンペイ島でもグアム島でも,離島出身者の集住地区は存在せず,人々は分散して居住しており,公共の場所やメンバーの住居でアソシエーションの会合は開催される。YMWOもWOOGも政治的な活動よりも,社交的な活動を中心として活動している。 アソシエーションの会合の議事録とそれに基づくインタビューによれば,Y囲0の主な活動は,メンバーの葬儀の援助,YapDayの実施,基金調達,役員の選出であった。WOOGの主な活動は月例会の開催,基金調達,クリスマス,イースター,感謝祭の機会のメンバー内での会食の実施,会則の制定と役員の選出であった。この中で基金調達活動はアソシエーションの活動を評価する重要な基準となっている。基金調達活動による現金の集積では,出身島填アイデンティティが喚起され,移民と母社会の関係が強化されることが確認された
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