本研究課題の目的は、インド国北西部、ジャム・カシミール州のラダック地方における実地調査をもとに、進行する現代化のもとでのシャマニズムの動態のメカニズムを人類学的視点から解明することにある。 本年度は本研究課題の目的にそって、研究代表者は文献資料の収集、整理、分析を進めるとともに、現代化とシャマニズムの動態を検討するための基礎資料とするために1980年代に実施したフィールド調査資料の整理と分析を進めた。また、平成21年2月25日から平成21年3月19日にかけて、インド国のデリー、ラダックにおいてフィールド調査を実施し、文献資料の収集を行うとともに、ラー(神)に憑依された村人が登場するストック僧院のグル・ツェチュ祭、ラーに憑依された僧侶が登場するマトゥ僧院のナグラン祭、シャマニズムの実践が維持される現状、ラダッキの冬の生活などに関する実態調査を行った。祭りの参与観察は現地研究協力者とともに行い、僧院儀礼に関する情報資料を収集した。実地調査によって、現代化が進む中で、ラー、シャマンの力への信仰が生き続けるという伝統の連続性を実証的に確認することができた。京都大学大学院生の研究協力者は、チベット仏教圏におけるシャマニズムの実践に関する文献資料の整理を行った。 フィールド調査においては、参与観察、聞き取り、デジタルカメラ、MDレコーダー等の機器による文化人類学的フィールドデータの収集と記録を行った。これら資料の整理、分析については、次年度においても継続して行われる。
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