本研究課題の目的は、インド国北西部ジャム・カシミール州のインド・ヒマラヤ山岳地帯に位置し、西チベットとも呼ばれてきたラダック地方における実地調査をもとに、現代化とシャマニズムの動態のメカニズムを人類学的視点から解明することにある。 研究代表者は、研究開始とともに、本研究課題の目的にそって文献資料の収集、整理、分析を進めるとともに、平成21年11月にインド国ジャム・カシミール州ラダックにおいてフィールド調査を実施した。フィールド調査は、ラダック上手地方を中心に、村のシャマンに焦点を当てたシャマニズムの実態、およびラー(神)に憑依された村人が登場することで有名な祭りの一つであるティクセ僧院のグストル祭りの実態に焦点をあてたもので、海外共同研究者であるコンチョク・パンディ師の協力のもとに行った。実地調査によって、僧院の祭りにおける村人に身体化されたラーの顕現は、現在でも人々の信仰を引きつける強い力を持ち続けることが確認され、ラダックにおける仏教伝統の連続性にはシャマニズム的力への信仰が不可分であるという知見を得た。 フィールド調査では、デジタルカメラ、ビデオカメラ、MDレコーダーなどの機器により参与観察および聞き取りのデータ収集・記録および文献情報資料等の収集を行った。これらのフィールド調査資料は、調査補助者の協力のもとデータベース化し、解析を進めているが、これらの資料の整理・分析については次年度にも継続して行われる。これまでの研究成果は、平成22年8月15-21日にカナダのトロントで開催される国際宗教学・宗教史学会第20回世界大会で発表することが決まっている
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