独立後のオセアニア島嶼国における伝統政治と民主主義的な政治制度との軋轢と接合について明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は、ヴァヌアツ共和国とソロモン諸島において調査を行った。 英仏共同統治領のヴァヌアツは、1980年に独立したが、分離独立運動が起きるなど、混乱した政治情勢が続いた。この背景には、西欧の文化や制度の導入を拒否する地域、部分的に受容する地域、そして積極的に受け入れる地域など、多民族・文化社会の実態が影響していた。しかし、留学経験のあるエリートたちが、キリスト教を国是として国家統一を目指し、国家運営を行っているが、一方において地方は伝統首長の権限において統治する体制を温存させている。 英国植民地のソロモン諸島は1978年に独立したが、多民族社会で国家統一には多くの問題を抱えている。1980年代から木材輸出による国家財政の安定化を進めたが、木材産出地域(州)への経済的還元がないことから、中央集権体制への反発と批判が地方から沸き起こった。具体的には、連邦制への移行、あるいは分離独立を主張する州も出てきた。2010年の総選挙では、連邦制を支持する議員が大勢を占めたが、議長の意見では、連邦制は政治家の考えでありこれから国民の合意を得るための活動が必要であり、連邦制への移行にはまだ時間がかかると述べている。 両国は独立30年を経るが、西欧の国家モデルによる国家建設を進めたが、島、地域、首長らが持つ旧来の権限・権利が依然として強く、伝統的な力を考慮した民主的政治体制の確立につとめている。
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