1、2010年12月22日に福建省晋江市陳〓鎮に入り、23日、24日にわたって丁氏回族による「冬の祖先祭祀」に出席させていただき、祖先祭祀体制の組織構造などをめぐって丁氏回族の宗族意識について調査を行った。2、2011年1月2日に再度福建省晋江市陳〓鎮に入り、7日までにムスリム社会にてフィールド・ワークを実施し、ほかのムスリム社会に見られない「回族事務委員会」・「陳〓片老人協会」・「陳〓民族南音社」・「陳〓詩聯書画社」、「全国文化財・丁氏祠堂管理委員会」など、政治・文化・社会福祉など多くの分野に存在する政府機構ではなく、また完全に民間団体でもないような「公共空間」に焦点を絞り、回族の人々だけではなく、周囲の漢民族からもその存在の正当性が認められた「大義名分」はなにかについて調査した。 以上の調査を通じて、価値観が共有できることは、組織の「公共性」によるものであり、あらゆる人に公平に利益をもたらしている「公共空間」の存在によって、中国のほかの地域に見られるような「回漢対立」は、この地域に全く見られず、社会安定は経済の発展を支えた;「公共空間」を通じて「陳〓回族」は周囲の漢民族よりも多くのネットワークを構築することができ、経済発展の基本条件を揃え、中国政府が農村における宗族勢力の復活を恐れているが、「陳〓回族」は中国の「少数民族政策」という「公共空間」において「丁氏宗族」をいち早く復活させ、華僑、とくに香港にいる「宗親」を通じて工業化、市場化、会社の株式上場に成功したのである、といった結論を得ることができた。その成果は論文「経済開発と『民族』の役割の再発見-『陳〓回族』の事例を通じて」にまとめた(愛知大学現代中国学会編『中国21』34号に投稿、現在印刷中)。
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