研究概要 |
1、2011年12月22日に浙江大学人文学院の中国の宗族社会、民間宗教の研究者と中国地域社会の社会構造、公共領域の研究方法について交流した後、24日から翌年1月5日までに福建省晋江市陳〓鎮に入り、1940年代に戦時期に陳〓から広西の桂林にあった中国著名なイスラーム学校「成達師範」に入学した丁銘起(現在88歳)、晋江市イスラーム協会の丁宗沐会長などに対し、丁氏宗族のイスラーム信仰などについて長いインタビューをした。2、四境村と花庁口村の村民委員会を訪問し、村民委員会と共産党支部の選挙システムと選挙過程について詳しく調査した。3,丁氏の経営者による株式上場の安踏グループと特歩グループの本部を訪問し、創始者を対象にその民族意識、宗族意識、地域意識、経営哲学、そして寄附行為に関する考え方について調査した。 4,論文「経済開発と『民族』の役割の再発見-『陳〓回族』の事例を通じて」(愛知大学現代中国学会編『中国21』34巻)を公表したほか、以上の調査結果に基づいて「『民族的』戦略の限界と公共性-ある沿海地域ムスリム社会の『改革開放』」(神戸大学『近代』に投稿)、「公共空間として『陳〓回族事務委員会』-『民族』と『宗族』との間」をそれぞれ執筆し、福建省沿海地域のある「回族」社会が中国の経済改革開放時期における歴史過程を復元し、大きな漢民族共同体によって囲まれている弱小な共同体として、そこで「民族」を巡って起こった様々な思惑と葛藤、共同体形成の試み、そして歴史的事件への対処などに対する検証を通じて、多民族国家中国の「民族的」共同体の存在意義、こうした共同体と政府との間の緊張関係の必要性、及びそこから生じてきた「民族的」主張と公共性との関係などの側面から、内部及び周囲社会によって受け入れられた共同体の創出、共同体にとって「公共性」の持つ意義およびその形成される条件を検討した。
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