研究概要 |
報告者はこれまでの研究を踏まえた上で、平成20年度において、新たに行った調査は下記の通りである。1、中国伝統音楽伝承の比較調査として日本伝統音楽琵琶に関する調査。2、中国新移民の音楽に関する調査。3、地域観光に関する調査。 報告書はこれまで中国の伝統音楽「南音」歴史源流,音楽構成,及び演奏形態と楽器、南音の伝承形態、南音の民俗とその社会的な役割、及び海外華人と南音にっいて明らかにしたが、その比較調査として日本の伝統音楽筑前琵琶について文献調査及び聞き取り調査を行った。筑前琵琶の前身となる盲僧琵琶は中国に源流とされ、大正時代から昭和時代の前期にかけてその全盛が呈されていた。その伝承の背景には江戸時代に形成されていた遊戯文化の影響や家元制の役割がある。 2、越境する伝統文化の受容・変容という視点から、引き続き日本に興った中国民族楽器二胡のブームについて調査を行った。二胡は中国の民族楽器であるが、新華僑によって日本に持たされて以来、その主体は完全に日本人に変わってしまい、日本の大衆音楽の一つとして捉えることもできる。二胡の伝播と受容は歴史上中国音楽である明清楽の日本人社会での受容と共通性を持っており、越境する音楽文化の伝播と変容の一つ事例として興味が深い。 3、地域観光に関連する調査として、中国の孔子祭の創出過程について調査を行った。行政主導型の観光開発として、これから日本の地域町づくりに参考例になるであろう。
|