本研究の目的は、研究代表者がここ数年間、実施してきた北アフリカ・マグリブ諸国におけるマイクロクレジットの研究を、さらに東アラブ諸国にまでその対象地域を広げて、マイクロクレジット(少額融資、以下MCと記す)のみならず、貯蓄、保険、送金などの金融サービスをも含むマイクロファイナンス(以下、MFと記す)も視野に入れて、その実態把握と貧困削減や雇用創出やジェンダー開発面へのインパクトについて検討・考察することである。 初年度はエジプトでの現地調査を行ったことから、次年度はその続行とまた2008年末の金融危機の影響について、中東の最貧国でかつMFが盛んなイエメンで調査をする計画であったが、イエメンの治安悪化から現地調査は断念せざるを得なかった。ただし、幸いにも昨年7月に開催されたアルジェリアでの国際会議への招待を受けて、その機会に中東・北アフリカのMC・MFの比較研究の成果を発表し、また日本の開発プロジェクトとして国際的にも普及しつつある「一村一品運動」や「道の駅」の事例も報告し、多くの反響を得て、また多様な国々の研究者と学術交流を行った。さらに文献研究の成果の一部を、JICAでアフリカ研修生向けに研修講師として講義をした他、幾つかの国際会議や講演会でも報告や講演を行った。また調査研究の成果を広く一般社会にも還元する意味で、『チュニジアを知るための60章』という著書の執筆と編集作業に勢力を費やした。本著書は今年7月刊行予定であり、その中でも本研究テーマについて論じた。
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