本研究の目的は、長崎の国際墓地埋葬者に焦点をあて、日本の近代的産業および西洋医学に著しく貢献した外国人功労者の来歴と人物像をあきらかにすることである。外国人功労者の足跡調査およびその業績の再検討を行うことによって、日本の近代化の発展過程がきわめて鮮明なものとなる。なぜなら、外国人功労者がもたらした情報や技術は、日本の近代的造船業、炭鉱業、海運業、通信業および西洋医学の源となったからであり、その源こそ日本の近代化にたいする影響を明らかにするものだからである。この作業によって、いままで充分評価されてこなかった長崎外国人居留地にかんする歴史的・文化的研究をいっそう前進させることができる。 この目的のもとに、2008年度は、英国・ロンドンにある国立公文書館(National Archives of the UK)に出向き、日本の近代化に貢献した長崎国際墓地埋葬者関連の資料の発掘・分析をおこなった。その成果は、論文「長崎居留地における西洋医学」(日本臨床内科医会会誌第23巻、5号、2009年)等に公表した。また、本研究は、日本の近代的産業に大きく貢献したフレデリック・リンガーにも焦点をあて、その子孫とのインタヴューを英国・ウィトビーほかで行った。 以上の研究・調査をとおして、今回収集することができた資料(インタヴューも含む)が長崎外国人居留地の歴史的・文化的研究におおいに役立つことを確認することができた。
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