本年度は8月にタイにおいて約一ヵ月間の現地調査をおこない、タイにある主要なコミュニティ博物館の概況把握と、次年度以降に参与観察調査をおこなう博物館を選定するための情報収集をおこなった。概況把握においては、最初にバンコクのシリントーン人類学センターを訪問し、パリッター所長およびその他研究員から、当センターのコミュニティ博物館支援活動の概況、コミュニティ博物館についての研究状況、関連文献図書の所在などについて有益な情報が得られた。それから当センターの図書館、チュラロンコーン大学図書館、タマサート大学図書館、芸術大学図書館等において関連する文献資料を収集した。 その後は、シリントーン人類学センターが研究プロジェクトを実施する2つのコミュニティ博物館と、チェンセーン博物館、ムアン寺民俗博物館、さらにはバンコク西部からナコンパトム県、ラチャブリ県にかけての小規模なコミュニティ博物館をめぐり、博物館の状況や運営のありかたについての情報収集をおこなった。とりわけ参与観察の有力候補と想定しているランパーン県のコミュニティ博物館では、博物館の歴史、展示形態、解説パネル、さらには周辺村落の状況などについての調査を実施した。その結果、想定していなかった諸条件が発見されたため、次年度以降の調査地についてまだ確定にはいたっていない。 なお、11月にシリントーン人類学センターで開催された「タイの地域博物館」というシンポジウムに特別講演者として招待されたため、そのときに数多くの関係者から情報収集をおこなったことは、タイのコミュニティ博物館の現状を理解する上で大きく役だった。
|