本年度は、科研費の当該課題の計画研究にしたがい、イベリア半島におけるブタ飼養ならびに他の家畜飼養に関わる文献を渉猟・収集すると同時に、日本国内における地域ブランド創出の現状を概観するための国内調査ならびに文献調査を行なった。 国内における調査は、予定どおり鹿児島において実施し、「鹿児島黒豚」としてブランド化されている六白品種の飼育状況、食品産業との関連等について資料を収集した。鹿児島では家畜豚飼養が食品産業の中にくみこまれていることが一つの特徴であり、回収された食物残滓が酵素処理されることによって家畜の飼料にされるという、食品の循環系が成立しており、それがブランドの一つの要素として組み込まれていた。これは近年、意識されている環境への負荷を軽減する「エコロジー」への指向が動物ブランドの肯定的なイメージ作りに使われており、家畜動物の飼育が社会的な価値観とは無関係には行われないということを具体的にしめすものと言える。すなわち、生態学的な資源の獲得のみならず、社会的にも肯定的な意味を付加することが、ブランドとしての動物種の確立に必要な条件であることが結論として導きだせることになった。 また文献の渉猟調査から、日本周縁地域における家畜豚の導入についても留意するべきことが明らかとなったため、スペイン統治がかつて行われた台湾でも補助的調査を行い、島嶼地域における豚飼養の歴史的背景についても資料を収集した。
|