平成20年度は、実施計画どおり、約2週間の現地調査を行い、一定の成果を上げた。 8月上旬、サハリン北部(アヒンスキー地区)ネクラソフカ村において、2名の話者から、ベリー類の利用を中心とした聞き取り調査を行った。聞き取りはすべて録画・録音により記録し、帰国後、日本語への翻訳を行うと同時に、得られた情報から植物の同定を行った。 ベリー類については、採集時期・場所(環境)等について、従来以上の詳しい情報を得ることができた。サケ・マスの身などと組み合わせた伝統的な料理について、料理法についての詳細な情報が得られ、調理の様子を録画記録することができた。 現代のニヴフの生活におけるベリー類の位置づけについても、採集したベリーの、都市部の市場での販売が貴重な現金収入になっているなど、その重要性を確認することができた。 また、ベリー類のみならず、草本を中心に、従来、利用に関する知見の全くなかった植物種について、利用していたという情報を得ることができた。そのうち多くの種について、話者とともに野外で現物を確認し、正確に同定する道筋をつけることができた。同定作業は引き続き進行中である。これらについては、既存文献(E.A.クレイノヴィチなどによる民族誌ほか)では触れられていない植物接および、正確に同定されていない植物種を含むものと思われる。 また、ニヴフ語についても、いくつかの植物名称など、新しい語彙を採録することができた。
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