平成21年度は、実施計画どおり、約2週間の現地調査を行った。調査期間は8月末~8月上旬、場所はサハリン北部のアヒンスキー地区およびノグリキスキー地区であり、数名の話者を対象に聞き取り調査を行った。 ネクラソフカ村では、普段話者たちがベリー類等の採取を行う砂丘を、話者と共に踏査し、植物採取をしながら聞き取りを行った。ノグリキ周辺では、ニヴフの家族が鮭鱒漁や植物採取のために夏の間滞在する浜小屋を訪ね、伝統的な生活に近い環境の中で、話者と共に屋外に出て聞き取りを行った。 聞き取りはすべて録画・録音により記録し、帰国後、日本語への翻訳を行うと同時に、植物の同定を行った。いずれの調査地でも、ベリー類およびその他の草本植物の利用について多くの情報が得られた。特にネクラソフカでは、聞き取りのみでは同定できず、かつ、生育地が非常に局所的である植物種を、話者の案内で実見し、確実に同定することかできた。これは、既往研究では知られていなかった食用植物であった。 これらの成果は、平成20年度の調査結果と合わせ、ニヴフの伝統的および今日的な植物資源利用に新たな知見を加えることとなる。 また、話者もロシア語名・学名等を知らない植物を正確に同定することにより、関連する分野の研究のみならず、ニヴフ自身の文化伝承活動等にも貢献できるものである。
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