平成22年度は、実施計画どおり、約2週間の現地調査を行った。調査期間は8月下旬~9月上旬、場所はサハリン北部のアヒンスキー地区であり、数名の話者を対象に聞き取り調査を行った。 滞在中の気象条件等が悪く、当初計画していた西海岸での調査は断念したが、平成21年度に引き続き、ネクラソフカ村対岸の砂丘を話者と共に歩き、ベリー類等の採取をしながら聞き取りを行った。また、集落内の森林および周辺で話者と共に植物採集を行い、聞き取りで情報が得られた植物の同定の補強材料とした。聞き取りはすべて録画・録音により記録し、帰国後、日本語への翻訳を行うと同時に、植物の同定を行った。 多くのベリー類およびその他の草本・木本植物についての利用情報が得られた。植物名称および関連語彙についても多く採録できた。特にネクラソフカでは、ムカゴトラノオなど、既往研究では知られていなかった食用植物の利用法についてのより詳細な情報を得た。 これらの成果は、ニヴフの伝統的および今日的な植物資源利用に新たな知見を加えるとともに、ニヴフ自身の文化伝承活動にも寄与するものである。
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