1、新しい考古民俗学的方法論の理論構築と論文化 琵琶湖地域民具資料について、(1)整理の経緯、(2)資料の特徴についてまとめたのち、資料整理の実際を、(1)資料目録の作成、(2)民具の「資料化」とは何か、(3)分類と実測の重要性、(4)資料札の整備という項目別に検討・整理した。そして、従来の民具研究法の問題点と課題を指摘しながら、民具を科学的に分析していくため、詳細な観察と実測、分類と形式化によって、「地域性」と「時代性」を明らかにできるという新しい方法論の在り方を探りながら船道具を例に実際例を提示した論文を『民具研究』145号に投稿・採択され、刊行された(2012年3月)。 2、物質文化のいくつかのテーマについて整理、成果展示の開催、図録等の作成 米をつくる道具として鋤・鍬・犂・唐箕・万石通、茶をつくる道具として手回し蒸し器・焙炉、魚をとる道具として小糸網.筌、船の道具として舵・櫓.碇・垢取り、そして桶風呂を取り上げ、これまで3年間に作成してきた詳細な実測図の提示と分類整理によって、その成果としての地域性と時代性の一部を明らかにした。また、これらの成果と明治時代に作成された『近江六郡物産図説』や『近江水産図譜』を比較して提示しながら、これまでの研究成果をわかりやすく公開するため、2012年1月7日から3月11日まで、『民具を科学する-明治の絵図と現代の実測図からみた近江の民具-』と題した展示を滋賀県立琵琶湖博物館企画展示室で開催し、その理解を助けるためのパンフレット『民具を科学する』を刊行した(2012年1月)。
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