本研究は、筆者が今まで行ってきた青海省共和県におけるチベット語アムド方言の記述方法を基に、チベット語の古層を反映すると考えられる甘粛省天祝県のアムド方言を記述し、他地域のアムド方言およびチベット文語、敦煌文献に現れる中古チベット語と比較検討することによって、チベット語の通時的な変化の一端を明らかにすることを目的とする。 本年度の研究業績は、現地調査、研究会への参加、研究成果のまとめ・発表の3つにわけられる。研究代表者は、平成20年12月24日〜21年1月7日の日程で、中国、甘粛省及び青海省において、アムド方言の言語調査と情報・資料の収集を行った。甘粛省蘭州市の西北民族大学ではアムド方言の研究者と話しあう機会を得た。甘粛省天祝県の中でも話されるアムド方言に差異がみられるため、主にどの地点の言葉を採取するべきかを検討し、来年度の調査の準備を行った。青海省共和県においてはアムド地方に伝わる民話の録音、文法調査の他、家畜(ヤク、牛、羊、馬など)の雌雄、年齢、毛色、模様などによる呼び分け方を調査した。現在、これらの調査結果を論文の形にまとめる作業を行っている(テキスト資料及び文法概説)。研究会への参加としては、平成20年10月23日に日本国内で行われた「チベット=ビルマ言語学研究会」の会合に参加し、国内のチベット・ビルマ系言語の研究者と意見交換を行った。平成20年11月1日には日本西蔵学会において「チベット語アムド方言における形態音韻的な交替現象-チベット文語との比較の視点から-」と題した発表を行った。
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