研究概要 |
野崎が広島から東京に来て、構成員3名で数回会議を開いた。本研究は、それぞれのこれまでの研究の継続という意味もあるが、嶋津と田島はそれぞれ論文を集めた単著を計画中である。2008年度中の出版は果たせなかったが、どちらの著書も2009年夏ころには出版の予定である(嶋津の著書『問いとしての<正しさ>』NTT出版)。嶋津論文「治療と設計の間一一家族論への挑戦一一」は、議論がまだあまり進んでいないとはいえ、本研究に直接関連する。野崎論文「代理出産、なぜそれは規制され得るのか」も、本研究テーマに直接関連している。田島は、上記著書に収録される予定の研究を主に行ったため、本年の業績は比較的少ないが、国民の倫理観と国家の関係を考えるための基礎理論ともいえる論文(「『神聖喜劇』論」)を発表した。嶋津報告「We, John Jones, Choose」は、lVR(国際法社会哲学学会連合)日本支部の招きで「神戸レクチャー」(1988年に始まって2年置きに続けられている国際講演シリーズ)のため来目したSunstein教授(シカゴ大学・当時)の講演に際して批判的なコメントを兼ねて報告したものである。自己決定モデルに対する批判的視点を取る同教授のこれまでの議論を一部評価(特に単純な経済的合理人モデル批判)しながら、推奨される「libertarian paternalisn」と再分配との関係について、批判的に論じたものであり、雑誌ARSPに発表予定。これらを通して、合理本=自己決定=自己責任モデル(を一定評価して上で)の批判という論点は、あらゆるテーマに通底している。
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