研究概要 |
本研究の目的は,フランスの法源論の現代的変容を総合的に考察することを最終的な目標として,直接には,判例変更の効果の問題および委任立法による法典改正の実務の解明を行うことに存する。 研究初年度の平成20年度においては,必要な文献情報資料およびハードウエアの整備のほか,中心的な論点の一方である,判例変更の遡及効の原理とこれに対する将来効の肯定の問題に集中して,演習等を中心的機会として,基礎的な研究を行った。 この関係でのフランス近代法の基本的原理は,法律中心主義であり,判例は法律の適用にすぎないと考えられるため,いかに新たな法原則の肯定を含むとしても,法律は,はじあからそのような意義を有していたこととみなされることになる。問題があれば立法改正を行えば足るという趣旨である。しかし,判例変更の結果として生ずる取引界の混乱と訴訟の激増とを予防するために,破殿院は,2004年の調査報告書の結論に徴して,2006年の判決によって判例変更の効果を将来的にのみ限定することに踏み切った。 この新たな立場は,判例の法源としての明確な肯定を論理的前提とするが,判例変更を行う判決自体のなかで,判事の判断に基づき,判例変更の効果を将来的に限定するための措置を明示するというものである。 これにより,基本的問題状況が概ね把握できたので,来年度に更に深化させるべく,研究を続行することとする。
|