研究概要 |
本研究は,フランス法における法源論の現代的変容に関する総合的な研究を目的とした。即ち,伝統的な法律中心主義に対する関係で,憲法規範の優越,EC法の優位に加えて,政府のイニシアティヴによる委任立法を手段とする法典化,判例の法規範性の実際上の肯定などの現代的変容が見られるのである。研究途上での困難さから,直接の研究課題を最後の問題に限定することとしていた。 積極面では,文献収集や研究機器の整備の点で概ね満足すべき成果があったこと,文献講読演習の形での一定の文献に関する徹底的な読み込みを通じて問題状況について大きな構図を描くことができたこと等が挙げられる。特に,2004年の破毀院諮問機関の報告書により,判例の法規範性の公式の承認を前提として破毀院が自己の判断により判例変更の遡及的効果を否定し必要な調整をみずから行い得るという(ある意味では全くあっけない)結論に対しては,従来から脈々と続いてきた議論が一挙に刺激されたことを通じて議論の構図が相当程度明らかとなったことは大きな成果であった。 しかし,残念ながら,これらの成果を論文の形でまとめるには至らなかった。最大の原因として,研究室の改築工事のための移転が長期に亙り段階的に進行したことにより研究スケジュウルに著しい混乱を余儀なくされたこと,更に,その上に,文献や資料の大多数の封印(倉庫での保管)の過程で,本研究のための資料の重要な部分が行方不明となり,やり直しを余儀なくされてしまったことがある。研究費の来年度への繰越も考えたが,学内での要件に該当せず断念せざるを得なかった。 最終年度を終えてこのような状態にとどまることにはまことに忸怩たるものがあるが,ひとまず終了とせざるを得ない。研究体制を建て直し,追って別途の形で縮小された成果の公表に努めたい。
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