1.ポーランドにおいては、1992年に制定されたラジオ=テレビ法が公共放送の危機(とくに「政治化」と財政危機)をもたらしているという認識から、これに代わる新たな枠組みが模索されているものの、新法の制定は挫折している。そこで、89年の政治的転換を経た新政府のもとでの立案作業に始まる92年法の立法過程についての分析を行ない、なぜ現在のような放送法制(規制機関としての全国ラジオ=テレビ評議会、公共テレビ・ラジオの経営形態としての国庫単独株式会社、受信料および広告収入を主な収入源とする財政構造など)が選択されたのかについて検討した。 また、02年に発生したラジオ=テレビ法改正をめぐる贈賄疑惑事件である「ルィヴィン事件」について、その背景について検討した。 さらに、引き続き現在進行形の事態(全国ラジオ=テレビ評議会の交替と公共放送の役員人事手続の変更にもとづく人事異動)を観察した。 2.ポーランドにおける第3回の現地調査を行ない、資料蒐集を行なうとともに、メディア研究の拠点のひとつであるドルノシロンスク大学(ヴロツワフ)の研究者などとの意見交換を行なった。また、9月15~17日にルブリンで開催されたポーランド社会コミュニケーション学会(Polskie Towarzystwo Komunikacji Spolecznej)の第2回大会に出席し、ポーランドにおけるメディア研究の現状について理解を深めた。 3.比較法学会第74回総会(2011年6月4~5日、法政大学)において研究代表者および連携研究者を報告者とするミニシンポジウム「体制転換と放送メディア-ポーランド・ロシア・中国の比較法的研究」を実施することが承認されたため、これに向けた準備研究会を実施した。
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