平成21年度の計画に基づき文献調査を継続したほか、以下を実施して成果を得た。 ●家事紛争当事者を支援する機関の概要と役割の特色と限界を検討するために、面談調査を行った。離婚率の極めて高い自治体(和歌山県・新宮市・御坊市・和歌山市、沖縄県・浦添市・沖縄市、苫小牧市・千歳市など)を訪問し、自治体や関係機関における相談業務の内容や相談者の傾向、その他問題点について資料収集・聞き取り調査を行った。共通する点は、子どもの面会交流を支援するための特別な仕組み・施設等がないこと、面会交流より養育費に関する相談が多いこと、家族問題の相談は中核の論点があっても相談事項は拡大しやすいこと、問題解決への期待をめぐって当事者と支援側との齟齬があること、相談担当者の安全についての議論がほとんどないこと等である。離婚に際しての家族紛争処理に関して、支援体制が依然として未成熟であることが確認された。 ●英国でも昨年度に引き続き、家族法専門の弁護士、母子家庭支援のNPO団体、本研究テーマに関連する研究の第一人者でもあるTrinder教授(Exeter大学)らに面談調査を行った。英国では養育費未払いを防ぐための具体策を実施されていることや当事者にとって弁護士の利用は一般的であることなど、日本との違いが明らかになったほか、collaborative lawといった新たな紛争処理方法を取り入れてきている実態について情報を収集することができた。
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