1.本研究は、離婚紛争当事者(とりわけ面会交流をめぐる紛争当事者)に対する総合的支援に関して、支援に関する原則、支援の内容、支援の仕組みを日英比較検討により明らかにすることを目的とした。 2.日本においては、家裁が家族紛争当事者へ適切な支援を提供しているが、一度、裁判所の判断が出された後の支援体制が十分ではない。裁判所での結果が有効に活かされず紛争が再発することもしばしば見られる。例えば、離婚手続の進行中さらには離婚手続終結後、精神的にも経済的にも不安定な当事者に対して具体的かつ現実的な支援を提供する仕組みは十分ではない。公的な機関以外ではきわめて限られた支援を民間機関が提供するにとどまっている。他方、英国では、裁判所の関与に加えてCAFCASSやChild Contact Centreなど司法・準公的機関・民間機関が離婚紛争当事者を紛争開始から司法決着がついた後の支援まで対象にして当事者への働きかけを行っている。そこでは、司法の専門家や精神医学の専門家のみならず民間のボランティアなどの参加を得た連携体制が整備されつつある。 3.英国の連携体制は、経済的基盤が十分ではない現実を前提にして、人的資源の有効活用や公的施設の有効利用を行い、限られた条件の中で、可能な限りの支援を提供している。また、制度全体を統一的に管理するのではなく、それぞれの機関や集団が「共有する基準」を決めた上で、独自の支援体制を展開している点は、多様な家族紛争に対する支接としての特色と言える。 4.本研究は、日英の支援体制とその実情を比較することによって、離婚紛争当事者に対する支援について検討する新たな視点と情報を提供することが出来た。
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