本研究の目的は、明治23年法律6号裁判所構成法の立法史を明らかにすることであるが、すでに、研究初年度において、法務図書館、国立公文書館などで日本における主要立法資料を収集し、また、裁判所構成法の原案起草者オットー・ルードルフについて、プロイセン資料館などでその履歴書、日本からの書簡などを収集した。 そこで、2年目に当たる当該年度においては、(1)ルードルフ関連の収集資料について目録を作成した。これについては、ハレ大学大学院生ヴァイト・ハマー氏の協力を得た。これにより、今後の資料の利用がきわめて容易になった。(2)法務図書館等に所蔵されている基本資料について、元東京高等裁判所部総括判事である蕪山厳氏とともに、解説を加えた『裁判所構成法』(信山社)を、平成21年度科研費研究成果公開促進費(刊行助成)を得て、2010年2月に刊行した。これは、裁判所構成法の重要資料である草案・意見書を掲載し、それぞれの草案・意見書間の関係を解明したものであり、裁判所構成法の立法経過をほぼ明らかにできた。また、(1)を生かしてオットー・ルードルフの評伝を掲載した。(3)また、その応用として、裁判所構成法におけるフランス法の影響として注目される境界確定に関する研究として、論文「フランス法における合意境界確定--土地所有権界確定と不動産取引安全」を発表した。これは、境界確定について、母法であるフランス法の展開をたどったものであり、本研究の実定法的意味付けという側面の研究である。 当該年度において裁判所構成法の立法経過が相当程度明確になったが、なお、残存資料が存在することも発見したので、この点の収集が残されている。また、当該年度の実績により、裁判所構成法の比較法的位置づけおよび当時の実態との関係など検討する土台が出来上がったことになる。
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