後見人が被後見人の財産管理から被後見人に対して負担する債務を実効的に確保するため、ローマ法では後見人就任に際し保証人を立てて約束し、また、専主政期以降は、後見人財産全部につき黙示の抵当権を認め、母が再婚した場合は、その夫財産にも及ぶものとされた。フランスでは、慣習法地域でも、黙示の抵当権を認め、フランス民法はこれを受継いだ。これと並び、後見人の担保約束=保証人の設定が要請されたが、多くの地域で貫徹せず、ノルマンディーおよびブルターニュにおいては後見人選定親族が保証人を引き受けたものとする規律が導入されたが、多くの不都合を惹起することとなり、フランス民法制定時には政府草案に採用されたが、議論の末、否定された。 ドイツでは、帝国ポリッツァイ条例により、後見人に対し担保設定を要求するものとしたが、都市法ではこれを規定しないものも多くあった。ローマ法以来の黙示の抵当権が存在することが、その理由とされる。プロイセン後見法の展開の中で、担保設定は公務を引き受ける後見人には過大の負担であるとする見解が有力となり、ドイツ民法はこれを受けて特段の事由ある場合に限り課し、また黙示の抵当権は破産法上の優先弁済権に転化した。 日本法は旧民法に法定抵当権を規定したが、民法では親族会裁量による担保供与義務を規定した。戦後の民法改正でこの規定も削除され、現在は後見人責任を実効的に確保しうる法的手段は全くかけている。成年後見の普及のためには、何らかの手当が必要と思われる。
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