20年度研究実施計画中に記した調査のうち、「1、基礎的文献調査の遂行」については、主にインターネットの韓国国会図書館の検索システムを用いて所蔵調査を行い、今年度中に必要性の高いものを現地調達した。また、「2、現地学者による計画についてのレビュー」および「3、現地学者へのインタビュー」に関しては、所属大学の職務の関係等で予定より短期間しか韓国滞在ができなかったが、7月と3月に渡韓し、東亜大学校金孝全教授、高麗大学校金善擇教授、全南大学校閔炳老教授、韓国法制研究院全在慶博士等から、本テーマについての意見を聞き、協力を依頼することができた。 本年度の具体的研究計画のうち、「4、計画1(立憲主義と民主主義の関係性に関する韓国の理論状況の分析)の遂行」に関連して、韓国民主主義のひとつの特徴である社会民主主義的性格とのかかわりで、金大中政権時時代の福精政策にスポットを当てた「韓国における福祉政策の位置づけ」を学会報告として発表した。今年度は主に現代韓国の理論状況について資料収集、分析を行ったが、その中で民主主義と共和主義の関係を取り上げる必要性を感じるようになり、この点については現在なお分析中である。また、もうひとつの計画であった「5、計画2(大韓民国建国後の民主主義概念の変化・発展とその内容についての分析)の部分的遂行」を進める中でその前提となる植民地化前の憲法学状況、日本の思想状況との関連をきちんと把握する必要を感じてまとめたのが、「韓国初期憲法教科書にみる近代国家観-金祥演と趙聲九-」と「日本の初期憲法思想における法実証主義と進化論」である。これによって韓国の憲法思想基盤をある程度明らかにすることができたが、建国後の状況についての分析結果を今年度中に発表するに至らなかった。
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