22年度は、年度初めの実施計画書の計画1に記した「立憲主義と民主主義の関係に関する韓国の理論状況の分析」として近年、韓国で注目されている「共和国」概念の分析を進めた。これについては21年度にそのきっかけとなる論文を執筆したが、本年度はそこで採り上げた韓国の議論をより詳細に検討し、「韓国における『共和国』の概念」にまとめた。共和主義の議論は世界的に行われているものであり、韓国の議論もそれを踏まえたものであるが、韓国の民主主義理念を理論的に見直す視点としては新しいものであり、今後の韓国の人権論と民主主義の方向性を探る上でも重要であると考えられる。なお、昨年度「東亜細亜憲法論壇」で報告した韓国に於ける民主主義と違憲審査との関係については、その内容が今年度、中国の学会誌に掲載された。 計画2に挙げた「大韓民国建国後の民主主義理念の変化・発展とその内容についての分析」に関しては、「韓国憲法における民主主義の理念」(曽我部真裕・赤坂幸一編『大石眞先生還暦記念憲政改革の理論と展開』に所収予定、校正中)で韓国憲法学上の争点のひとつである「民主的基本秩序」という文言を巡る学説・判例の分析を行った。これによって建国以降の民主主義理念の変遷状況の概略を捉えることができた。また「基礎的文献調査」については、特に第三、四共和国関連の資料を収集し、前記論文「韓国憲法における民主主義の理念」の内容のうちの国家保安法とたたかう民主制に関する部分に反映させた。
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