研究概要 |
本年度は,昨年度の研究作業の延長上で、行政の契約手法のみならず、官民全体の契約活動の基盤を社会制度のモデルとして、ドイツのeIDカード(電子身分証)およびeID機能の官民共用のしくみ、制度的特徴を研究し、公表した。オンライン等でのeIDの利用機能をオプトインで利用可能なほか、電子署名の利用も可能な仕様になっている。eIDカードは国民に所持が義務づけられる文書なので、国民に広く電子的本人確認機能を提供し、官民双方で電子的な本人確認と電子署名の利用のためのサービスを普及させるためのインフラ整備の試みとして注目される。 またドイツでは、ドイツ版電子私書箱にあたるDe-Mailサービス法が成立し、eIDの導入とあいまって、民間の事業者が提供し、本人確認をeIDカード等を利用して安全になし、安全にログインして、送受信証明機能を発行しつつ送受信される安全確実な電子メールの通信基盤を法制化したものである。これも、官民の通信、契約などの基盤的な制度として、注目されるものであることを調査研究して,その重要な異議を公表した。我が国では、電子署名も普及途上であり、電子メールも証明手段を伴う安全な通信手段としては制度化されていないことから、早急なインフラ整備が求められること、その参考としてのドイツの法制度が重要であることを指摘したものである。 こうした作業と並行して、行政契約の事例収集・調査を行ったが、行政契約については、その争訟制度が改正され、争訟件数の多さを交通整理するための除斥効を伴った制度として、事業者の権利救済と行政の契約活動の迅速化のバランスを保った制度にしようとしていることを調査研究した論文を公表した。
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